「いくらですか」に、先に答えられない理由
物件や民泊の撮影のご相談で、最初にいただく質問はほぼ決まっています。「全部でいくらですか」。正直にお答えすると、撮る前には分かりません。それは値段を隠しているのではなく、必要な枚数が物件ごとに違うからです。
ワンルームの民泊と、一棟貸しの町家では、掲載ページに必要な写真の枚数がまったく違います。同じ2LDKでも、バルコニーからの眺めが売りの部屋と、水回りを新しくしたばかりの部屋では、力を入れるべきカットが変わります。総額を先に決めてしまうと、この差をどこかで無理に吸収することになります。
大笑フォトグラフィの撮影料金は、総額固定ではなく1枚単価制です。撮影のあと、実際に納品する枚数に1枚あたりの単価を掛けた金額がお支払いいただく額になります。この記事では、なぜこの方式にしているのか、枚数はどう決まるのか、依頼前に何を伝えていただければ目安が出せるのかを、実務の順に書きます。
総額固定の見積もりで起きる「過不足」
2015年頃から大阪を拠点に、飲食店の料理写真、和室・洋室のインテリア、そして民泊・宿泊施設や物件の撮影を重ねてきました。宿泊予約サイトやフードデリバリーの撮影も多数手がけてきた中で、総額固定の料金には構造的な弱点があると感じています。
総額を先に決めるには、「だいたいこのくらいの物件なら、このくらいの枚数だろう」という見込みが要ります。見込みが外れると、二つのどちらかが起きます。
- 多く見積もっていた場合: 実際は少ない枚数で十分だったのに、総額はそのまま。依頼者は使わない写真の分まで払うことになります。
- 少なく見積もっていた場合: 現場で「この角度も欲しい」「この部屋も撮っておきたい」となっても、枚数に収まらないので撮らない、あるいは追加料金の話を現場で切り出すことになります。
どちらも、撮る側と依頼する側の利害が撮影の途中でずれてしまう状態です。総額固定のもとでは、写真家は「枠内に収める」ことを考え、依頼者は「元を取る」ことを考える。本来は二人とも「掲載ページに必要な写真が全部揃う」ことだけを考えているはずなのに、料金の形がそれを邪魔します。
1枚単価制の仕組み — 撮って良かった分だけ

1枚単価制では、料金は最後に決まります。流れはこうです。
- ご相談: 掲載先(予約サイト、不動産ポータル、自社サイトなど)と間取りを伺い、必要な枚数の目安をお伝えします。
- 撮影: 目安にとらわれず、その物件の掲載ページに必要なカットを一通り撮ります。撮影中に「この部屋はもう1カット要る」と判断したら、その場で撮ります。
- セレクトと仕上げ: 撮った中から、掲載に使える状態まで仕上げた写真だけを納品候補にします。ここで枚数が確定します。
- お支払い: 納品枚数×1枚単価。部屋数や物件の件数は関係なく、手元に残る仕上がり写真の枚数だけで金額が決まります。
「撮って良かった分だけ」というのは、この3番目の工程のことです。撮影現場ではどうしても、同じ場所を露出や角度を変えて何枚も撮ります。そのすべてが掲載に値するわけではありません。似たカットが2枚あれば良い方だけを残す。撮ってみたら思ったほど部屋の性格が伝わらなかったカットは外す。そうして残ったものだけが納品枚数になるので、使えない写真に料金がつくことがありません。
枚数はどう決まるか
「では何枚になるのか」を、依頼前にできるだけ具体的に想像していただくために、枚数を左右する要素を挙げておきます。
- 掲載先の仕様: 予約サイトの一覧サムネイル用の1枚目、部屋ごとの引きのカット、水回り、設備、外観。掲載先が求める構成が、必要枚数の土台になります。
- 部屋数と動線: ゲストや内見者が上から順に見ていく並びを想定すると、部屋の数だけ引きの1枚が要り、そこに設備や眺望のカットが加わります。
- 物件の売り: 眺め、庭、キッチン、ワークスペース。その物件を選ぶ理由になる場所には、通常より枚数を割きます。
- 現場の状態: 片付けが行き届いていれば、撮り直しや構図の制約が減り、無駄なく必要枚数に届きます。
リピートで何年も撮り続けている物件では、オーナーさんと私の間で「この物件はこのくらい」という感覚が共有されていて、目安と実際の枚数がほとんどずれなくなります。初めての物件でも、掲載ページのURLか間取り図を拝見すれば、撮影前に枚数の幅をお伝えできます。
依頼する側にとっての意味

この方式を続けているのは、依頼する側にとって次の三つが同時に成り立つからです。
金額の根拠が見える。請求書に書かれるのは「枚数×単価」の掛け算だけで、内訳を読み解く必要がありません。
規模に対して過不足がない。小さな物件は小さな金額に、大きな物件はそのぶんだけ増える。撮影内容と金額が比例します。
現場で遠慮しなくていい。「これも撮ってほしい」が追加料金の交渉にならず、単に納品枚数が1枚増えるだけで済みます。撮る側も、枠を気にせず必要なものを撮れます。
一方で、この方式には「撮る前に総額が確定しない」という性質があります。予算の上限が決まっている場合は、その上限を先に教えていただければ、枚数の優先順位を組んで上限内に収める設計にします。上限に収める作業は撮影前にできるので、当日に慌てることはありません。
掲載ページと間取りを見せていただくところから
大笑フォトグラフィは、大阪を拠点に民泊・宿泊施設、物件・建築・内装、イベント、商品などの写真撮影を行っている個人事業です。1枚単価制の撮影料金についてご相談いただく際は、掲載先と、いまの掲載ページのURLか間取り図をお送りください。必要枚数の目安と、そこから見える金額の幅を、撮影前に具体的にお伝えします。
大笑フォトグラフィ / Daisho Photography(個人事業・代表 松村穂高)
Email:contact@daishophotography.com
Web:osaka.daishophotography.com
